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聴覚障害者の生活を支える障害年金-認定基準と申請のポイント
2024.09.17
耳の聞こえにくさを抱える方々にとって、障害年金は生活の大きな支えとなります。しかし、聴覚障害の障害年金申請には、独特の認定基準があり、適切な申請手続きが求められます。
本記事では、聴覚障害の特徴や症状、そして障害年金の認定基準について詳しく解説し、聴覚に不安を感じている方や、周囲に聴覚障害のある方がいる方々に向けて、障害年金申請の際に知っておくべき重要なポイントをお伝えします。 聴覚障害があっても、適切な支援を受けながら充実した生活を送るための第一歩として、ぜひご参考にしてください。
聴覚障害とは
聴覚障害は、音を聞き取る能力が低下または喪失した状態を指します。この障害は、軽度のものから重度のものまで様々な程度があり、日常生活や社会生活に大きな影響を与えることがあります。
聴覚障害は、先天的な要因や後天的な要因によって引き起こされ、その原因や症状によって適切な対応や支援が必要となります。
聴覚障害を持つ方々にとって、コミュニケーションの取り方や情報へのアクセスが課題となることが多く、社会全体での理解と支援が求められています。
聴覚障害の原因
聴覚障害の原因は多岐にわたり、先天的な要因としては、遺伝子の異常や胎児期の感染症などが挙げられます。後天的な要因には、加齢による聴力低下、騒音性難聴、薬物による副作用、中耳炎などの耳の病気、頭部外傷などがあります。また、ストレスや全身疾患が聴覚に影響を与えることもあります。
原因によって症状の進行や治療法が異なるため、早期の診断と適切な対応が重要です。聴覚障害の予防には、騒音対策や定期的な聴力検査が効果的です。
聴覚障害の治療方法
聴覚障害の治療方法は、原因や症状の程度によって異なります。
軽度から中等度の難聴では、補聴器の使用が一般的で、重度の難聴や補聴器の効果が期待できない場合には、人工内耳の埋め込み手術が選択肢となります。また、耳鼻咽喉科での薬物療法や手術的治療が効果的な場合もあります。
治療と並行して、言語聴覚士による聴覚訓練やコミュニケーション支援も重要です。さらに、手話や読話などのコミュニケーション手段の習得も、生活の質の向上に役立ちます。
聴覚障害の症状
聴覚障害の症状は、その種類や程度によって様々です。主な症状としては、音が聞こえにくい、音が歪んで聞こえる、特定の周波数の音が聞き取りにくいなどがあります。また、耳鳴りやめまいを伴うこともあります。症状によっては、会話の内容が理解しづらくなったり、音の方向がわかりにくくなったりすることもあります。
聴覚障害は外見からは分かりにくいため、周囲の理解が得られにくいことがあり、早期発見と適切な対応が、生活の質を維持する上で重要です。
伝音難聴
伝音難聴は、外耳や中耳に問題がある場合に起こる聴覚障害の一種で、音を内耳に伝える経路に障害があるため、音が弱められて聞こえます。
主な原因としては、耳垢の詰まり、中耳炎、耳小骨の異常などがあります。症状としては、音が小さく聞こえる、自分の声が大きく聞こえるなどがあります。
多くの場合、医学的治療や手術で改善が可能であり、補聴器の使用も効果的です。早期の診断と適切な治療により、聴力の回復や維持が期待できます。
感音難聴
感音難聴は、内耳の蝸牛や聴神経に問題がある場合に起こる聴覚障害で、音を電気信号に変換する過程や、その信号を脳に伝える経路に障害があります。
主な原因には、加齢、騒音、ウイルス感染、薬物の副作用などがあります。症状としては、音が歪んで聞こえる、特定の周波数の音が聞き取りにくいなどがあります。
治療は難しい場合が多く、補聴器や人工内耳の使用、聴覚訓練などが主な対応方法となります。早期発見と適切な管理が重要です。
混合難聴
混合難聴は、伝音難聴と感音難聴の両方の特徴を併せ持つ聴覚障害で、外耳・中耳と内耳・聴神経の両方に問題がある状態を指します。原因としては、先天性の異常や、長期にわたる中耳炎が内耳にも影響を与えた場合などが挙げられます。
症状は複雑で、音の大きさと質の両方に影響が出ることがあります。治療方法は、伝音難聴の部分に対する医学的治療と、感音難聴の部分に対する補聴器や人工内耳の使用を組み合わせることが多いです。
聴覚障害の障害年金の認定基準とは
聴覚障害の障害年金認定基準は、純音による聴力レベル値と語音による聴力検査値(語音明瞭度)に基づいて判断されます。この基準は、日常生活や就労にどの程度の支障があるかを評価するためのものです。 認定には、オージオメータによる検査結果が重要となり、聴力レベルと語音明瞭度の組み合わせによって、障害の程度が判定されます。認定基準は定期的に見直されることがあるため、最新の情報を確認することが大切です。適切な認定を受けるためには、専門医の診断と詳細な検査結果が必要です。
障害年金の等級
聴覚障害の障害年金等級は、主に1級、2級、3級に分かれています。
1級は両耳の聴力レベルが100デシベル以上の場合です。
2級は両耳の聴力レベルが90デシベル以上、または80デシベル以上で最良語音明瞭度が30%以下の場合です。
3級は両耳の聴力レベルが70デシベル以上、または50デシベル以上で最良語音明瞭度が50%以下の場合です。
これらの基準に満たない場合でも、日常生活への影響度によっては障害手当金の対象となることがあります。等級は定期的に見直されることがあるため、症状の変化に応じて再認定を受けることが重要です。
障害者手帳とは別の制度なの?
障害年金と障害者手帳は、目的や運用が異なる別の制度です。
障害年金は経済的支援を目的とし、国民年金や厚生年金の加入者が対象となります。一方、障害者手帳は福祉サービスの利用や各種優遇措置を受けるためのものです。
認定基準も異なり、障害年金はより詳細な医学的所見に基づいて判断されます。両制度の等級が必ずしも一致するわけではありません。例えば、両耳の聴力レベルが100デシベル以上の場合、障害年金は1級ですが、障害者手帳は2級です。
障害者手帳を持っている場合、障害年金の申請の参考になることがあります。それぞれの制度の特徴を理解し、適切に活用することが重要です。
障害年金を請求する進め方
障害年金を請求する手続きの進め方は以下の通りです
- 初診日を調べて特定する
- 受診状況等証明書を取得
- 診断書(肢体の障害用)の作成を依頼
- 病歴・就労状況等申立書を作成
初診日を調べる
障害年金の請求には、「初診日」が非常に重要となります。なぜなら、初診日時点に加入していた年金制度(国民年金もしくは厚生年金)によって、受給できる障害年金が異なるからです。さらに、初診日前日までに保険料納付要件を満たしているかどうかを判断するためにも必要となります。
受診状況等証明書を取得
初診日を証明する書類として、受診状況等証明書があります。初診から請求する時まで、同一医療機関に通院している場合は、受診状況等証明書は必要ありません。しかし、初診の医療機関と、現在通院する医療機関が異なる場合、初診の医療機関で受診状況等証明書を取得する必要があります。
診断書の作成を依頼
障害年金の審査で一番重要なものは、診断書の内容です。
ご自分の状況をいかに主治医に詳しく伝えて、診断書に反映させてもらうかが重要です。
病歴・就労状況等申立書を作成
「病歴・就労状況等申立書」は、初めて医師の診察を受けた時の経緯、発病から現在までの経過を整理して、年月順で記入します。請求する人から病状の進み具合、障害により日常生活で困っていることなどを伝える唯一の書類です。
最後に
障害年金の請求は、認定されるのが難しいケースもあります。
認定基準や手続きの進め方で悩んだり判断が付かなかったりする場合は、一度年金事務所や社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。