大和社会保険労務士事務所

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ダウン症の方の生活を支える障害年金-認定基準と申請のポイント

2024.11.06

障害年金は、ダウン症の方が安定した生活を送るための支援制度の一つです。ダウン症による生活上の制約や就労の難しさを支援する大切な制度ですが、申請には一定の認定基準や手続きが必要です。本記事では、ダウン症とは何か、その症状と障害年金の認定基準、さらに申請の際のポイントについて詳しく解説します。ダウン症の方がいるご家族が障害年金の制度を理解し、申請の手続きを正しく行うことで、生活の支えとなるでしょう。

ダウン症とは

ダウン症は、染色体異常によって引き起こされる先天性の障害です。通常人の体細胞には、22対+X+XまたはYの46本の染色体がありますが、ダウン症の場合、21番目の一対(2本)の染色体が3本ある(トリソミー21)ために様々な身体的・知的な影響が現れます。

ダウン症には大きく3つのタイプが存在します。

標準型(トリソミー21型)

最も一般的なタイプで、ダウン症全体の約95%を占めます。すべての体細胞に21番目の染色体が1本多い状態です。

転座型

全体の約4%を占めるタイプで、21番目の染色体の一部が別の染色体にくっついている(転座している)状態です。親の遺伝的要因によって発症することもあります。

モザイク型

約1%の割合で見られるもので、一部の細胞にのみ21番目の染色体が1本多い状態です。症状の重さには個人差があり、一般的には他のタイプと比べて軽度となる傾向があります。

これらのタイプに関わらず、ダウン症の方には共通する特徴的な症状がありますが、個々の発達や健康状態はさまざまであり、それに応じた支援が必要です。

ダウン症の症状

ダウン症の方には様々な身体的および知的な特徴や合併症が見られます。これらの症状は個人差が大きく、軽度から重度まで様々です。以下に、代表的な症状を紹介します。

身体的な特徴

ダウン症では、低身長、顔や目の形の特徴、筋力の低下などが見られます。身体的な発達が他の子どもより遅れることがあります。

知的障害

知的な発達が遅れ、一般的に学習において支援が必要です。IQは低めですが、その範囲は幅広く、個別の教育や療育が効果的です。

合併症のリスク

心臓病、呼吸器の問題、消化器系の疾患、甲状腺の機能低下などの合併症を持つことが多く、定期的な医療管理が欠かせません。また、視覚や聴覚の問題を抱えることもあります。

これらの症状により、日常生活においてさまざまな支援や特別なケアが必要です。障害年金を活用することで、より安定した生活を送ることができるでしょう。

ダウン症の障害年金の認定基準とは

障害年金には一定の認定基準があり、ダウン症の方が障害年金を受給するためには、障害等級と呼ばれる基準に該当する必要があります。

障害等級について

障害年金は1級から3級までの障害等級で分類されます。ダウン症の場合、知的障害の程度や日常生活の制限度合いによって等級が決まります。

●1級:最も重度であり、日常生活において常時介護が必要
●2級:日常生活で一部支援が必要
●3級:就労において著しい制限がある

具体的な認定基準

ダウン症による障害年金の認定には、知的障害の程度、行動上の支障、医療の必要性などが考慮されます。日常生活で頻繁に介助を必要とする、医療的ケアを必要とする、などがあると、認定の対象となりやすくなります。

申請における注意点

申請には医師の診断書が必要です。診断書には、現在の健康状態や障害の程度、日常生活の困難さなどが詳細に記載されていることが求められます。また、知的障害の程度を示す心理検査の結果や、療育手帳の写しなどの書類も必要です。

まとめ

ダウン症の方にとって、障害年金は生活を支える大切な制度です。ダウン症の特性や症状に応じて等級認定を受けると、生活費の支援を受けることができます。申請では、医師の診断書や日常生活の支援状況を詳しく伝えます。家族や支援者とともにしっかりと準備を進め、障害年金で生活の質を向上させましょう。

障害年金を請求する進め方

障害年金を請求する手続きの進め方は以下の通りです

  1. 初診日を調べて特定する
  2. 受診状況等証明書を取得
  3. 診断書(肢体の障害用)の作成を依頼
  4. 病歴・就労状況等申立書を作成

初診日を調べる

障害年金の請求には、「初診日」が非常に重要となります。なぜなら、初診日時点に加入していた年金制度(国民年金もしくは厚生年金)によって、受給できる障害年金が異なるからです。さらに、初診日前日までに保険料納付要件を満たしているかどうかを判断するためにも必要となります。

受診状況等証明書を取得

初診日を証明する書類として、受診状況等証明書があります。初診から請求する時まで、同一医療機関に通院している場合は、受診状況等証明書は必要ありません。しかし、初診の医療機関と、現在通院する医療機関が異なる場合、初診の医療機関で受診状況等証明書を取得する必要があります。

診断書の作成を依頼

障害年金の審査で一番重要なものは、診断書の内容です。
ご自分の状況をいかに主治医に詳しく伝えて、診断書に反映させてもらうかが重要です。

病歴・就労状況等申立書を作成

「病歴・就労状況等申立書」は、初めて医師の診察を受けた時の経緯、発病から現在までの経過を整理して、年月順で記入します。請求する人から病状の進み具合、障害により日常生活で困っていることなどを伝える唯一の書類です。

最後に

障害年金の請求は、認定されるのが難しいケースもあります。
認定基準や手続きの進め方で悩んだり判断が付かなかったりする場合は、一度年金事務所や社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

記事監修
この記事を書いた人

吉成玲子

職業:大和社会保険労務士事務所 代表社労士

所属:埼玉県社会保険労務士会、障害年金法研究会

27年の銀行勤務を経て、2009年に社会保険労務士として開業。 障害年金の相談員としての経験を経て、2012年より障害年金専門社労士として活動開始。相談件数1000件以上、裁定請求300件、審査請求20件、訴訟補佐人1件(勝訴)の実績を持ち、障害年金受給後のサポートも行い、多数の研修会やセミナーで登壇も行っています。