大和社会保険労務士事務所

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65歳で障害年金を受給する条件と申請のポイント

2024.12.10

障害年金は、病気やけがによって日常生活や仕事に支障が出る場合に支給される公的年金ですが、65歳を過ぎると受給の条件や申請方法に制限がかかります。しかし、65歳以降でも一定の条件を満たせば受給が可能です。本記事では、65歳で障害年金を受給するための条件や申請時のポイントについて解説します。

障害年金受給の原則

障害年金の申請には、いくつかの重要な原則があり、これらの条件を満たす必要があります。以下が障害年金申請の基本的な原則です。

初診日が65歳未満であること

障害年金の申請において、初診日が65歳未満であることが基本的な条件です。障害年金は、障害の原因となった病気やけがで「初めて医療機関を受診した日」(初診日)からカウントされるため、65歳以降に初診日がある場合は申請できません。したがって、65歳未満で初診日が確定していることが申請の前提となります。

障害認定日において障害等級に該当していること

初診日から1年6ヶ月後の「障害認定日」に、障害等級(1級または2級)に該当していることが必要です。この時点で障害の状態が認定されることで、障害年金の受給資格が得られます。障害等級は、日常生活や就業にどの程度影響があるかに基づいて判断され、医師の診断書をもとに認定されます。

障害認定日の特例

以下に掲げる傷病の種類や状態によって、特例として初診日から1年6ケ月以内であっても、その治療行為をした日が、障害認定日となります。

  • ・人工透析療法を行っている場合は、透析を受け始めてから3か月を経過した日
  • ・人工骨頭または人工関節を挿入置換した場合は、挿入置換した日
  • ・心臓ペースメーカー、 ICD (植込型除細動器)、CRT (心臓再同期医療機器)、CRT-D(除細動器機能付心臓再同期医療機器)または人工弁を装着した場合は、装着した日
  • ・人工肛門の造設または尿路変更術の手術をした場合は、 造設日または手術日から起算して6月経過した日
  • ・新膀胱を造設した場合は、 造設した日
  • ・切断または離断による肢体の障害は、原則として切断または離断した日 (障害手当金または旧法の場合は、創面が治癒した日)
  • ・喉頭全摘出の場合は、全摘出した日
  • ・在宅酸素療法を行っている場合は、在宅酸素療法を開始した日
  • ・脳血管疾患による肢体障害等であって、 初診日から6か月経過後の症状固定日(初診日から6か月経過で一律障害認定となるわけではなく、 診断書等に 「症状固定」や「回復見込みなし」 等の記載があれば、例外的に障害認定の診査が受けられるもの)
  • ・人工血管または人工心臓 (補助人工心臓含む)の装着、 または心臓移植の施術を受けた場合は、装着または施術の日
  • ・現在の医学では、根本的治療方法がない疾病であり、今後の回復は期待できず、初診日から6月経過した日以後において気管切開下での人工呼吸器 (レスピレーター)使用、胃ろう等の恒久的な措置が行われており、日常の用を弁ずることができない状態であると認められるとき
  • ・遷延性植物状態については、その障害の状態に至った日から起算して3か月を経過した日以降に、医学的観点から、機能回復がほとんど望めないと認められるとき

保険料納付要件を満たしていること

障害年金の受給には、初診日までの間に年金保険料の納付状況が一定の基準を満たしていることが必要です。具体的には、以下のどちらかを満たす必要があります

・初診日の属する月の前々月までに加入期間の3分の2以上の保険料が納付されていること
・初診日前の1年間に未納がないこと(直近1年間の納付要件)

保険料の納付要件を満たしていない場合、障害年金の申請資格が認められないため、納付状況の確認が重要です。

請求期間内に申請すること

障害年金は、請求を行わない限り受給できない「申請主義」の制度です。初診日から一定の期間が経過した後に申請した場合、過去の分をさかのぼって受給できないケースもあるため、早めの申請が推奨されます。請求のタイミングや必要な書類を揃えることも重要です。

65歳以降も障害年金を受け取るには

障害年金は、基本的には65歳未満での申請が求められますが、いくつかの条件を満たせば65歳以降も申請・受給することができます。まずは、この基本的な条件について確認していきましょう。

65歳以上で障害年金を申請できるケース

障害年金は原則として65歳未満での申請が必要ですが、一定の条件を満たしていれば、65歳以上でも申請が認められる場合があります。以下は、65歳を過ぎても障害年金を申請・受給できるケースです。

1.65歳までに認定された障害状態の維持

65歳未満で障害年金の受給資格を取得し、その後も障害等級に該当する状態が続いている場合、更新の診断書も提出することによって65歳を過ぎても障害年金を受給し続けることが可能です。このため、65歳の時点で既に認定されている障害状態が継続していることが重要です。

2.初診日が65歳の誕生日の2日前までであること

障害年金の申請には、病気やけがによる「初診日」が65歳未満であることが求められます。具体的には、初診日が65歳の誕生日の2日前までであれば、65歳を過ぎても申請が可能です。これにより、初診日が65歳以降であれば新たな障害年金の申請はできなくなります。

3.障害認定日に障害等級に該当していること

初診日から1年6ヶ月後の「障害認定日」において、障害等級に該当する状態であることも申請の条件です。障害認定日において、該当する障害等級の状態が確認されていれば、65歳以降も引き続き障害年金の受給が可能です。

4.保険料納付要件を満たしていること

障害年金の受給には、保険料の納付要件も重要な条件です。初診日までに保険料の納付が一定基準を満たしている必要があり、未納期間が多いと申請が認められない場合もあります。このため、保険料の納付状況を確認することが重要です。

老齢年金と障害年金の併給

65歳になると、老齢基礎年金(国民年金)や老齢厚生年金(厚生年金)の受給が始まりますが、障害年金と老齢年金の併給には原則的に制限があります。ここでは、老齢年金と障害年金の関係や、併給が認められるケースについて解説します。

受給金額の多いほうを選択

65歳になると、障害年金と老齢年金のいずれかを選択して受給することが基本となります。通常、老齢年金と障害年金はどちらか一方のみの受給が可能であり、両方を同時に受け取ることはできません。そのため、受給金額を比較して、より多いほうを選択するのが一般的です。

具体的な年金額の比較や判断については、最寄りの年金事務所で相談するとよいでしょう。また、選択に迷った場合は、将来的な年金額の変動も考慮して選択することが大切です。

例外的に併給できるケース

例外的に、障害基礎年金と老齢厚生年金の併給が認められるケースがあります。具体的には、以下のような場合です。

・障害基礎年金と老齢厚生年金の併給:障害基礎年金と老齢厚生年金は、それぞれ異なる年金制度から支給されるため、併給が可能とされています。したがって、障害基礎年金を受給しながら、老齢厚生年金を受給することで、結果的に併給の形が取れる場合があります。

・障害等級1級や2級での受給:障害基礎年金の受給者で、かつ老齢厚生年金の資格を持つ場合には併給が可能です。具体的な併給条件は、受給者の年金加入状況や障害の状態によって異なるため、詳細は年金事務所で確認が必要です。

併給の手続き

併給が認められる場合でも、併給手続きや年金額の確認が必要です。年金事務所に相談することで、必要な手続きを確認し、適切な申請ができます。特に、受給額が大きく関わるケースですので、併給可能な場合は専門の相談窓口を利用することをおすすめします。

65歳以降に受けられる他の公的支援

65歳以降に障害年金が受けられない場合でも、他の公的支援を活用することで生活支援が得られる場合があります。障害者手帳に基づく各種福祉サービス、介護保険制度、医療費補助などが利用できる可能性がありますので、生活支援や医療費補助などの制度も活用してみましょう。

65歳以降に障害年金を受けられない場合や、老齢年金を選択する場合でも、生活を支えるための公的支援が利用できることがあります。障害年金以外にも、65歳以上の方を対象としたさまざまな支援制度が用意されています。ここでは、65歳以降に利用できる主な支援制度について紹介します。

障害者手帳による福祉サービス

障害者手帳を取得している場合、年齢に関係なく、各種の福祉サービスが利用できます。障害者手帳に基づく支援には、以下のようなものがあります。

・医療費助成
・公共交通の割引
・生活支援サービス
・税金の減免

介護保険制度

65歳以上になると、介護保険の被保険者として、介護が必要な場合に各種の支援を受けることができます。介護保険の利用により、介護や生活支援を通じて日常生活をサポートするサービスが提供されます。

・訪問介護
・デイサービス
・福祉用具のレンタル、購入
・施設入居サービス

障害者控除による税負担の軽減

障害者控除は、障害がある方の所得税や住民税を軽減する制度です。障害者手帳を持っている場合や、医師の診断で障害状態が認定されている場合に適用されます。

・所得税、住民税の控除
・特別障害者控除

医療費助成制度

自治体によっては、65歳以上の高齢者や障害者に対して医療費助成制度を設けている場合があります。医療費助成により、病院での診察料や処方薬の費用負担が軽減されます。

・高齢者医療制度
・重度心身障害者医療費助成

生活保護制度

収入や資産が不足し、生活に困難を感じる場合には、生活保護制度を利用して生活費や医療費の支援を受けることも可能です。障害年金や老齢年金の受給額が生活費に満たない場合、生活保護の申請が検討できます。

まとめ

65歳を過ぎて障害年金を受け取るには、初診日や障害状態の継続など、いくつかの条件を満たす必要があります。また、老齢年金との併給についても注意が必要です。自分の状況に応じた適切な申請や手続きを進め、最適な受給方法を選択することが大切です。

記事監修
この記事を書いた人

吉成玲子

職業:大和社会保険労務士事務所 代表社労士

所属:埼玉県社会保険労務士会、障害年金法研究会

27年の銀行勤務を経て、2009年に社会保険労務士として開業。 障害年金の相談員としての経験を経て、2012年より障害年金専門社労士として活動開始。相談件数1000件以上、裁定請求300件、審査請求20件、訴訟補佐人1件(勝訴)の実績を持ち、障害年金受給後のサポートも行い、多数の研修会やセミナーで登壇も行っています。