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初診日とは?障害年金請求でつまずかないための全知識|証明できない時の対処法も解説
2025.12.21

障害年金の申請を考えたとき、多くの人が最初に「初診日」という言葉の壁にぶつかります。
意味がよくわからなかったり、証明が難しかったりして、手続きの第一歩でつまずいてしまう方も少なくありません。
「もう無理かもしれない」と、諦めかけてしまうこともあるでしょう。
しかし、初診日の正確な意味や、なぜそれほど重要なのかを理解すれば、道は開けます。
証明が困難な場合でも、解決策は一つではありません。
この記事では、専門的な知識がない方でも初診日について深く理解できるよう、丁寧に解説していきます。
まずは基本から|障害年金の「初診日」とは何か?
障害年金の申請手続きを進める上で、すべての基準となるのが「初診日」です。
この言葉の意味を正しく理解することが、申請の第一歩となります。
まずは、初診日の基本的な考え方から確認していきましょう。
初診日の定義:病名確定日ではなく「初めて診療を受けた日」
初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、「初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」を指します。
ここで重要なのは、病名がはっきりと診断された日ではない、という点です。
例えば、体に不調を感じて近所の内科を受診し、数年後に専門医からうつ病と診断された場合を考えてみましょう。
| 時系列 | 出来事 | 初診日の判定 |
|---|---|---|
| 2018年 4月 | 倦怠感や不眠でA内科を初めて受診 | この日が初診日 |
| 2018年 5月 | 症状が改善せずB心療内科を紹介される | - |
| 2020年 10月 | B心療内科で正式に「うつ病」と診断される | この日は初診日ではない |
このように、最終的な診断名とは異なる症状で受診した場合でも、その不調が後の障害に繋がっていれば、最初の受診日が初診日となります。
自分で「この日が初診日のはず」と思い込んでいても、制度上の考え方とは異なる場合があるため注意が必要です。
【ケース別】あなたの初診日はいつ?間違いやすい5つのポイント
初診日の特定は、個々の状況によって判断が難しい場合があります。
ここでは、特に間違いやすい5つのケースについて、初診日の考え方を解説します。
| ケース | 初診日の考え方 | 補足説明 |
|---|---|---|
| 1. 健康診断 | 原則として初診日にはならない | 健診で異常を指摘され、治療目的で初めて医療機関を受診した日が初診日です。ただし、健診結果から直ちに治療が必要と判断された場合は、例外的に健診日が初診日と認められることもあります。 |
| 2. 相当因果関係 | 前の病気の初診日が適用される | 糖尿病が原因で腎不全を発症した場合など、前の病気と後の病気に医学的な因果関係が認められると、糖尿病で初めて受診した日が腎不全の初診日となります。 |
| 3. 社会的治癒 | 再発後に初めて受診した日が新たな初診日となる | 病状が回復し、おおむね5年以上にわたり治療や服薬なしで社会生活を送れた後に再発した場合、「社会的治癒」が認められ、再発後の受診日が初診日となることがあります。 |
| 4. 発達障害 | 自覚症状で初めて医療機関を受診した日 | 他の病気と同様に、発達障害の特性について初めて医師の診察を受けた日が初診日となります。 |
| 5. 知的障害 | 「出生日」 | 知的障害は先天的な要因によるものと考えられるため、生まれた日(出生日)が初診日とされます。 |
なぜ最重要?初診日が障害年金の受給可否を分ける3つの理由
「なぜ、たった1日のことで手続きがこれほど複雑になるのか」と疑問に思うかもしれません。
初診日は、障害年金制度の根幹に関わる3つの重要な要件を決定する、まさに「羅針盤」の役割を果たしています。
この日付一つで、受給できるかどうか、そして受け取れる金額まで変わってしまうのです。
理由1:受給できる年金の種類(基礎or厚生)が決まる
初診日にどの年金制度に加入していたかによって、受給できる障害年金の種類が決まります。
これにより、支給額や障害等級の範囲が大きく異なります。
| 初診日に加入していた年金 | 受給できる年金の種類 | 対象となる障害等級 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 国民年金 | 障害基礎年金 | 1級・2級 | 自営業者や学生、無職の方などが対象です。年金額は定額で支給されます。 |
| 厚生年金 | 障害厚生年金(+障害基礎年金) | 1級・2級・3級 | 会社員や公務員などが対象です。障害基礎年金に加えて、給与額に応じた年金が上乗せされます。3級や、それより軽い障害手当金の制度もあります。 |
例えば、同じ2級の障害状態でも、初診日に厚生年金に加入していた方が、国民年金のみの場合より受給額は多くなります。
この違いは、その後の生活設計に大きな影響を与えます。
理由2:保険料を納めていたか(納付要件)の基準になる
障害年金を受給するには、原則として、初診日の前日までに一定期間の保険料を納めている必要があります。
この「保険料納付要件」を満たしているかどうかは、初診日を基準にして判断されます。
保険料納付要件(いずれかを満たす必要あり)
- 初診日のある月の前々月までの加入期間のうち、3分の2以上の期間で保険料を納めている(または免除されている)。
- 初診日のある月の前々月までの直近1年間に、保険料の未納がない。
もし初診日の特定を誤ると、本当は要件を満たしているのに不支給と判断されたり、逆に未納期間が多い時期が基準となり受給できなくなったりする危険性があります。
理由3:障害の程度を判断する日(障害認定日)が決まる
障害の状態を審査し、年金を支給するかどうかを決定する基準日を「障害認定日」と呼びます。
この障害認定日は、原則として「初診日から1年6ヶ月を経過した日」と定められています。
つまり、初診日が確定しなければ、障害認定日も決まりません。
そうなると、いつの時点の障害状態で審査を進めればよいのか分からず、手続き自体が止まってしまいます。
初診日の特定は、審査のスタートラインに立つための必須条件なのです。
【この記事の核心】初診日が証明できない…「カルテがない」を乗り越える代替手段の全貌
障害年金申請で最も多くの方が直面する壁が、この「初診日の証明」です。
特に、初診日が10年、20年以上前だと、病院にカルテが残っていなかったり(法律上の保存義務は5年)、病院自体がなくなっていたりすることも珍しくありません。
しかし、ここで諦める必要はありません。
カルテがなくても、初診日を証明するための方法は残されています。
Step1:【優先度:高】公的書類を探す(障害者手帳の診断書、健康保険の記録など)
まず探すべきなのは、公的機関が発行した信頼性の高い書類です。
これらは、初診日の証明において非常に有力な証拠となります。
| 書類の種類 | 入手先の例 | ポイント |
|---|---|---|
| 障害者手帳申請時の診断書の写し | 市区町村の障害福祉担当課 | 診断書に初診日の記載があれば、強力な証拠になります。役所での保管期間に注意が必要です。 |
| 生命保険等の給付申請時の診断書 | 加入している保険会社 | 保険金を請求した際の診断書の控えが残っている場合があります。 |
| 健康保険組合の給付記録(レセプト) | 加入していた健康保険組合や協会けんぽ | 診療報酬の明細記録で、受診日や医療機関名が確認できます。 |
| 労災保険の給付記録 | 労働基準監督署 | 仕事中のけがが原因の場合、労災の記録が役立ちます。 |
| 母子健康手帳、学校の健康記録 | 自宅保管、卒業した学校 | 20歳前の病気やけがの場合に有力な資料となります。 |
Step2:【優先度:中】手元の資料をかき集める(診察券、お薬手帳、紹介状)
公的な書類が見つからなくても、自宅や実家に残っている身近な資料が証拠になることがあります。
一つ一つの証明力は弱くても、複数組み合わせることで信憑性が高まります。
- 初診の病院の診察券
- お薬手帳、薬剤情報提供書
- 病院の領収書
- 他の病院への紹介状
-- 入院、手術の同意書や記録 - 家計簿や日記(通院日の記載があるもの)
これらの資料から、いつ、どこの医療機関を受診したのかを推測する手がかりを探します。
Step3:【優先度:中〜低】第三者に証明してもらう(第三者証明)
客観的な書類が何もない場合の手段として、第三者に当時の状況を証明してもらう方法があります。
これを「第三者証明」と呼びます。
| 証明を依頼できる人(例) | 証明してもらう内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| ・友人、隣人 ・会社の上司、同僚 ・学校の先生、民生委員 |
・いつ頃からどのような症状があったか ・いつ頃、どこの病院を受診したか ・当時の本人の様子 |
・原則として2人以上の証明が必要です。 ・証明者は家族以外の第三者である必要があります。 ・医師や看護師など医療従事者の証明であれば、1人でも認められる可能性が高まります。 |
ただし、第三者証明だけで初診日が認められるのは難しく、他の資料とあわせて提出するのが一般的です。
最終手段:「受診状況等証明書を添付できない申立書」を提出する
あらゆる手段を尽くしても、病院から初診日の証明書(受診状況等証明書)が取得できない場合があります。
その場合は、「受診状況等証明書を添付できない申立書」という書類を提出します。
この申立書には、なぜ証明書を提出できないのかという理由を詳しく書きます。
そして、これまでに集めたStep1~3の資料を添付することで、初診日を認めてもらえるよう申し立てを行います。
この書類は、諦めずに努力した経緯を示す最後の手段となります。
専門家(社労士)への相談は必要?判断する3つのタイミング
初診日の特定は非常に複雑で、自分一人で進めるには限界を感じることもあるでしょう。
特に以下のようなケースでは、障害年金を専門とする社会保険労務士(社労士)への相談を検討することをおすすめします。
タイミング1:初診日が10年以上前、病院が廃院している
カルテの保存期間(5年)を大幅に過ぎていたり、初診の病院が閉院していたりすると、資料集めは非常に困難になります。
専門家は、どのような代替資料が有効か、どこに問い合わせればよいかといったノウハウを持っています。
タイミング2:転院が多く、病名が変わっている
複数の病院を転々としていると、どこが本当の初診日なのか判断が難しくなります。
また、最初の症状と現在の病名が違う場合、「相当因果関係」や「社会的治癒」といった専門的な判断が必要になることもあります。
このような複雑なケースでは、専門家による客観的な整理が不可欠です。
タイミング3:医療機関に証明書の作成を断られた
まれに、病院側から証明書の作成を断られてしまうケースもあります。
このような場合、専門家が間に入ることで、病院への説明や交渉を円滑に進め、協力を得られる可能性があります。
| 専門家(社労士)に相談するメリット |
|---|
| 1. 個々の状況に合った最適な証明方法を提案してくれる |
| 2. 面倒で時間のかかる資料収集や書類作成を代行してくれる |
| 3. 年金事務所や医療機関との交渉を任せられる |
| 4. 精神的な負担が減り、治療に専念できる |
| 5. 結果的に、年金を受給できる可能性が高まる |
まとめ:初診日の壁は突破できる!諦めずに正しい一歩を踏み出そう
障害年金における初診日は、受給資格から年金額まで、申請のすべてを左右する最も重要なポイントです。
その特定と証明は簡単ではありませんが、決して乗り越えられない壁ではありません。
カルテがない、病院がないといった困難な状況でも、この記事で紹介したように、公的書類や手元の資料、第三者の協力など、道は複数残されています。
大切なのは、最初から諦めずに、可能性のある手段を一つずつ試していくことです。
もし一人で進めることに不安を感じたら、専門家の力を借りることも有効な選択肢です。
まずは、できることから着実に一歩を踏み出してみてください。