光を当ててがん細胞を壊す新たながん免疫療法の安全性を患者で確かめる臨床試験(治験)が、国内でも年内開始を目指して準備されていることがわかった。開発した米国立保健研究所(NIH)の小林久隆主任研究員が11日、朝日新聞の取材に答えた。手術や抗がん剤で治らないがん患者の治癒につながる治療法の実用化への第一歩と期待を集める。

 この治療法は「光免疫療法」。近赤外光を当てると反応する化学物質と、特定のがん細胞に結びつく性質があるたんぱく質(抗体)を結合させた薬を注射すると、抗体はがん細胞と結びつく。近赤外光を当てると、化学物質が反応してがん細胞を破壊し、これをきっかけに免疫細胞が活性化するという。近赤外光はテレビのリモコンなどに使われ、人体に当たっても害がない。

 ログイン前の続き米国では2015年から、NIHと契約を結んだベンチャー企業「アスピリアン・セラピューティクス」が最初の治験を実施。手術や放射線、抗がん剤で治らなかった頭頸部(けいぶ)がんの患者8人のうち、3人はがんがなくなり、治療後1年以上生存している。5人は治療後に亡くなったが、うち4人はがんが縮小していた。重い副作用はなかった。

 小林さんらは11年、この手法を使ってマウスの治療に成功したと米医学誌ネイチャー・メディシンに発表。12年には当時のオバマ米大統領が新しいがん治療法として一般教書演説で言及した。小林さんによると、19年には米国で承認を得て、実用化を目指したいという。将来的には抗体の種類を8程度に増やし、がん患者の8~9割が治療の対象になりうるという。

 日本では、米国で治験を実施する企業の日本法人が頭頸部がんの患者を対象に、年内の治験開始を目指している。

 小林さんは取材に、「光免疫療法はがんが再発した人も希望が持てる方法。がんに打ちかつ治療として普及させたい」と話した。

 免疫療法は手術、放射線、抗がん剤に次ぐ「第4の治療法」と言われ、オプジーボなどの治療薬が注目されている。(南宏美)