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お知らせ

人工弁手術後の障害年金請求ガイド

2024.04.09

人工弁の手術は、心臓病による弁の機能障害を補うために行われます。この手術を受けた後、患者さんは日常生活においてさまざまな調整を迫られることになります。その中でも、障害年金の請求は特に重要なプロセスとなります。障害年金は、手術後の生活を支え、経済的な安定をもたらすための重要な手段です。

人工弁とは

人工弁は、心臓の弁が病気や損傷により正常に機能しなくなった場合に使用される医療機器です。心臓の弁は血液の流れを一方向に制御し、効率的な循環を保つために重要です。弁の機能が損なわれると、心臓のポンプ機能が低下し、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。

人工弁手術は、損傷した弁を人工のものに置き換えることで、心臓の機能を回復させることを目的としています。手術には主に二種類の人工弁が使用されます。機械弁は金属製で耐久性が高い一方、生体弁は動物の組織から作られており、より自然な感覚を提供しますが、耐久性は機械弁に劣ります。

機械弁を選択した場合、血栓を防ぐために抗凝固薬を継続的に服用する必要があります。これは、特に若年者や出血リスクが低い患者に推奨されます。一方、生体弁は抗凝固薬を長期間服用する必要がないため、高齢者や特定の医療条件を持つ患者に適していますが、時間が経つと劣化するため、将来的に再手術が必要になる可能性があります。

人工弁手術を検討している方は、医師と相談し、自分の健康状態やライフスタイルにあった弁を選ぶことが重要です。

人工弁が必要となる症状

人工弁が必要となる症状は、心臓弁膜症に関連するもので、心臓の弁が正常に機能しないことによっておこります。主な症状には、息切れ、胸痛、不整脈などがあります。これらの症状は、心臓が効率的に血液を全身に送り出すことができないために生じます。

息切れは、特に運動時や横になった状態で顕著になることがあり、日常生活においても階段を上るなどの軽い活動で息苦しさを感じることがあります。胸痛は、心臓への血流が制限されることによって発生し、不整脈は心臓の電気的なリズムが乱れることで起こります。これらの症状は、心臓のポンプ機能が低下していることを示しており、治療が必要になっているサインです。

心臓弁膜症は、弁が狭窄して開きにくくなる状態(狭窄症)や、弁が正常に閉じないことで血液が逆流する状態(閉鎖不全症)を指します。これらの状態は、心臓に余計な負担をかけ、心臓の筋肉が弱る原因となります。症状が進行すると、心臓の機能がさらに低下し、最終的には心不全を引き起こす可能性があります。

人工弁が必要となる症状が現れた場合、医師はエコー検査や心電図などを使って、心臓の状態を判断します。これらの検査によって、心臓弁膜症の程度や治療の必要性が判断されます。症状が軽度であれば薬物療法や生活習慣の改善で管理することができますが、症状が重度である場合や、心臓の筋肉が弱ってしまう前に、人工弁による手術が必要となることがあります。

人工弁手術は、損傷した弁を取り除き、人工の弁に置き換えることで心臓の機能を回復させることを目的としています。この手術によって、心臓の負担が軽減され、症状が改善されるようになります。

人工弁の障害年金の認定基準とは

障害年金を受給するためには、日本年金機構が定める一定の認定基準を満たす必要があります。人工弁の手術を受けた方は、原則として障害年金3級に該当することが多いですが、症状や障害の程度によっては、2級や1級に該当する場合もあります。

障害の程度 障害の状態
1級
  • 病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA 心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級
  • 1. 人工弁を装着術後、6 ヶ月以上経過しているが、なお病状をあらわす臨床 所見が 5 つ以上、かつ、異常検査所見が 1 つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

  • 2. 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち 2 つ以上の所見、かつ、病 状をあらわす臨床所見が 5 つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級
  • 1. 人工弁を装着したもの

  • 2. 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち 1 つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が 2 つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

(注 1) 複数の人工弁置換術を受けている者にあっても、原則 3 級相当とする。
(注 2) 抗凝固薬使用による出血傾向については、重度のものを除き認定の対象とはしない。
引用:日本年金機構 障害認定基準

人工弁を装着後、日常生活に大きな支障がない場合は、障害等級は3級に認定されます。
そのため、先天性の心臓疾患の方は初診日が国民年金なので、該当しないことになります。
ただし、成人として厚生年金に加入してから人工弁を装着した場合は、それまでの経過によっては「社会的治癒」が認められて、先天性の方でも認められることがあります。

障害年金に関する詳細な情報や申請方法については、専門家に相談することをお勧めします。

障害年金を請求する進め方

障害年金を請求する手続きの進め方は以下の通りです

  1. 初診日を調べて特定する
  2. 受診状況等証明書を取得
  3. 診断書(肢体の障害用)の作成を依頼
  4. 病歴・就労状況等申立書を作成

初診日を調べる

障害年金の請求には、「初診日」が非常に重要となります。なぜなら、初診日時点に加入していた年金制度(国民年金もしくは厚生年金)によって、受給できる障害年金が異なるからです。さらに、初診日前日までに保険料納付要件を満たしているかどうかを判断するためにも必要となります。

受診状況等証明書を取得

初診日を証明する書類として、受診状況等証明書があります。初診から請求する時まで、同一医療機関に通院している場合は、受診状況等証明書は必要ありません。しかし、初診の医療機関と、現在通院する医療機関が異なる場合、初診の医療機関で受診状況等証明書を取得する必要があります。

診断書の作成を依頼

障害年金の審査で一番重要なものは、診断書の内容です。
ご自分の状況をいかに主治医に詳しく伝えて、診断書に反映させてもらうかが重要です。

病歴・就労状況等申立書を作成

「病歴・就労状況等申立書」は、初めて医師の診察を受けた時の経緯、発病から現在までの経過を整理して、年月順で記入します。請求する人から病状の進み具合、障害により日常生活で困っていることなどを伝える唯一の書類です。

最後に

障害年金の請求は、認定されるのが難しいケースもあります。
認定基準や手続きの進め方で悩んだり判断が付かなかったりする場合は、一度年金事務所や社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

記事監修
この記事を書いた人

吉成玲子

職業:大和社会保険労務士事務所 代表社労士

所属:埼玉県社会保険労務士会、障害年金法研究会

27年の銀行勤務を経て、2009年に社会保険労務士として開業。 障害年金の相談員としての経験を経て、2012年より障害年金専門社労士として活動開始。相談件数1000件以上、裁定請求300件、審査請求20件、訴訟補佐人1件(勝訴)の実績を持ち、障害年金受給後のサポートも行い、多数の研修会やセミナーで登壇も行っています。