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肝硬変による障害年金の受給ガイド

2024.05.10

肝硬変は多くの人々の生活に影響を与える重大な疾患であり、その症状や進行は個々人の生活に深刻な障害をもたらすことがあります。この記事では、肝硬変の基本情報と、肝硬変が原因で障害年金を受給するための条件について詳細に説明します。

肝硬変とは

肝硬変は、肝臓の長期にわたる慢性炎症により、肝臓組織が正常な肝細胞から線維質の組織に置き換わっていく疾患です。この線維化の進行により、肝臓は硬くなり、その機能が低下します。肝硬変の原因としては、B型やC型の肝炎ウイルス感染、長期間の過剰なアルコール摂取、非アルコール性脂肪肝疾患、自己免疫性肝炎、遺伝性の代謝異常などがあります。

肝臓は体内で重要な役割を果たしており、タンパク質の合成、解毒作用、消化吸収を助ける胆汁の生成などを行っています。肝硬変が進行すると、これらの機能が低下し、さまざまな体系的な問題を引き起こします。特に進行した場合、肝臓がんのリスクが高まるほか、体内の毒素処理能力が低下するため、肝性脳症を含む重篤な合併症につながることがあります。

肝硬変は不可逆的な病態であり、治療は症状の管理と病状の進行を遅らせることに焦点を当てます。根本的な原因(例えば、ウイルス性肝炎の抗ウイルス治療やアルコール摂取の停止)に対処することが疾患管理の第一歩です。さらに、食事療法、薬物療法、定期的な医療チェックが推奨されます。病状が極めて重篤な場合には、肝移植が最終的な治療選択となることもあります。

肝硬変の症状

肝硬変の症状はその進行度に応じて異なりますが、初期段階では自覚症状が少ないことが一般的です。多くの患者が無症状であり、肝硬変が偶然の健康診断や他の疾患の検査中に発見されることがあります。しかし、病気が進行するにつれて以下のような複数の症状が現れることがあります。

●黄疸
肝機能の低下により、ビリルビンという物質が体内に蓄積し、皮膚や眼の白目が黄色く見える状態を引き起こします。

●腹水
肝硬変による門脈圧亢進症状として、腹部に過剰な液体が溜まる現象が起こります。これは、肝臓での血液の流れが阻害されるために発生し、腹部が膨らむという症状が見られます。

●消化管出血
門脈高血圧症は、肝硬変に伴い消化管の静脈(特に食道や胃の静脈)に過剰な圧力がかかるために生じます。これが原因で静脈が破裂し、重度の出血を引き起こすことがあります。

●肝性脳症
肝臓がアンモニアなどの毒素の処理を行えなくなるため、これらの毒素が脳に影響を及ぼし、意識の混濁や行動の変化を引き起こす神経系の障害です。これにより、患者は記憶障害、混乱、倦怠感、昏睡に至ることもあります。

●その他の症状
肝硬変はまた、食欲不振、体重減少、疲労感といった一般的な症状を引き起こすこともあります。さらに、進行すると手の震え、呼吸困難、血便などの重篤な症状が現れることもあります。

これらの症状は、肝硬変が進行するとともに悪化し、患者の生活の質に深刻な影響を及ぼすため、早期の診断と管理が重要です。

肝硬変の障害年金の認定基準とは

肝硬変による障害年金の認定基準は、肝疾患の慢性性とびまん性を基本条件とし、肝臓の機能障害の重症度により障害等級が決定されます。障害等級は肝臓の機能評価を含む複数の医学的指標と日常生活における制限の程度に基づいています。以下は主な評価項目と障害等級の判定基準です。

評価項目

●血清総ビリルビン:正常値は0.3〜1.2mg/dLですが、高度異常とされる値は3.0mg/dLを超える場合です。

●血清アルブミン:正常範囲は4.2〜5.1g/dLで、3.0g/dL未満を高度異常と評価します。

●血小板数:正常値は13万〜35万/μLで、5万/μL未満を高度異常として扱います。

●プロトロンビン時間(PT):正常は70%以上130%以下で、40%未満を高度異常と判断します。

●腹水の有無:難治性腹水を高度異常とします。

●脳症の程度:Ⅰ度からⅤ度までの分類があり、Ⅱ度以上を高度異常と評価します。

一般状態区分表
区分 一般状態
  • 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

  • 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

  • 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

  • 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

  • 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの


障害等級の認定

●1級:臨床所見において高度異常が3つ以上、または高度異常2つと中等度異常2つ以上を示し、日常生活が極めて困難であり、ほとんどの時間をベッドで過ごす必要がある(一般状態区分表のオに該当)。

●2級:高度異常が3つ以上、または中等度異常が複数存在し、日常生活に明らかな制限があり、部分的な介助が必要な場合(エ又はウに該当)。

●3級:中等度又は高度の異常が2つ以上で、日常生活に制限はあるものの、自立して活動できる時間が一定以上ある場合(ウ又はイに該当)。

これらの基準により、肝硬変の症状が日常生活や労働に与える影響の程度を総合的に判断し、障害年金の支給等級が決定されます。障害年金の受給資格は、これらの医学的評価の結果と、障害の発生時における国民年金または厚生年金保険への加入状況によって異なります。

※尚、アルコール性肝硬変については、継続して必要な治療を行っていること、 及び検査日より前に180日以上、アルコールを摂取していないことが条件になります

障害年金を請求する進め方

障害年金を請求する手続きの進め方は以下の通りです

  1. 初診日を調べて特定する
  2. 受診状況等証明書を取得
  3. 診断書(肢体の障害用)の作成を依頼
  4. 病歴・就労状況等申立書を作成

初診日を調べる

障害年金の請求には、「初診日」が非常に重要となります。なぜなら、初診日時点に加入していた年金制度(国民年金もしくは厚生年金)によって、受給できる障害年金が異なるからです。さらに、初診日前日までに保険料納付要件を満たしているかどうかを判断するためにも必要となります。

受診状況等証明書を取得

初診日を証明する書類として、受診状況等証明書があります。初診から請求する時まで、同一医療機関に通院している場合は、受診状況等証明書は必要ありません。しかし、初診の医療機関と、現在通院する医療機関が異なる場合、初診の医療機関で受診状況等証明書を取得する必要があります。

診断書の作成を依頼

障害年金の審査で一番重要なものは、診断書の内容です。
ご自分の状況をいかに主治医に詳しく伝えて、診断書に反映させてもらうかが重要です。

病歴・就労状況等申立書を作成

「病歴・就労状況等申立書」は、初めて医師の診察を受けた時の経緯、発病から現在までの経過を整理して、年月順で記入します。請求する人から病状の進み具合、障害により日常生活で困っていることなどを伝える唯一の書類です。

最後に

障害年金の請求は、認定されるのが難しいケースもあります。
認定基準や手続きの進め方で悩んだり判断が付かなかったりする場合は、一度年金事務所や社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

記事監修
この記事を書いた人

吉成玲子

職業:大和社会保険労務士事務所 代表社労士

所属:埼玉県社会保険労務士会、障害年金法研究会

27年の銀行勤務を経て、2009年に社会保険労務士として開業。 障害年金の相談員としての経験を経て、2012年より障害年金専門社労士として活動開始。相談件数1000件以上、裁定請求300件、審査請求20件、訴訟補佐人1件(勝訴)の実績を持ち、障害年金受給後のサポートも行い、多数の研修会やセミナーで登壇も行っています。