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脳梗塞の後遺症で障害年金をもらうには?脳梗塞の症状や認定基準を解説

2023.02.22

脳梗塞は日本人の死因第3位である「脳血管疾患」の1つで、脳梗塞になった人の6割以上に、何らかの後遺症が残るといわれています。脳梗塞の後遺症によって日常生活や仕事に支障が出るようになった場合、障害年金を申請することが可能です。しかし、後遺症は身体のあらゆるところに現れ、症状によって認定基準が異なるため、複雑すぎて諦めてしまう人も少なくありません。ここでは、脳梗塞の症状、障害年金を申請する際の認定基準などをご紹介します。

脳梗塞とは

梗塞は、脳の血管が詰まることで脳細胞に酸素や栄養が運ばれなくなった結果、脳の細胞が死んでしまう恐ろしい病気です。脳梗塞は、「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性梗塞」「心原性脳塞栓」の3種類に大別されます。

ラクナ梗塞は、細い血管の壁が厚みを増して狭まることで発症します。症状が出にくく、MRI検査で発見されることも多いのが特徴です。60代の15~20%、70代の30%以上、80代の半数以上に見られます。

アテローム血栓性脳梗塞は、脳の太い血管や首の血管が動脈硬化によって狭くなる、あるいは詰まることで起きる脳梗塞です。

心原性脳塞栓は、不整脈により心臓でできた血栓が脳に運ばれ、太い血管が詰まることで発症します。脳梗塞の中で20~25%を占めており、他の種類の脳梗塞と比べて、前触れなく突然発症するのが特徴です。

脳梗塞の症状

脳梗塞の後遺症は、大きく分けると①身体の障害 ②脳の障害 になります。

①身体の障害
  • ・片半身麻痺や手足が動きにくくなる運動障害などの肢体の障害
  • ・感覚障害・・・温度を感じない、ものに触った感覚がないなどです。
  • ・そしゃく、嚥下(えんげ)機能の障害・・・飲み物や食べ物が飲み込めなくなる、誤嚥(ごえん)の危険が大きくなるなど。
  • ・視覚障害・・・物が二重に見える、視野の半分もしくは1/4が見えないといった症状です。
  • ・言語障害・・・声が出しにくい、呂律が回らない、他人の言葉がうまく理解できないなど。
②脳機能の障害

・高次機能障害(認知障害)
高次機能障害(認知障害)は、記憶力の低下、集中力の低下、人格が変わり、すぐに興奮して暴力をふるうなどの症状で、新しいことが覚えられない、過去のことを思い出せない、といった症状も含まれます。

脳梗塞の障害年金の認定基準とは

*ここでは、後遺症で一番多い肢体の障害について解説します。
次に多い高次脳機能障害は、「精神の障害」になりますので、別途解説いたします。そちらをご覧ください。


脳梗塞は、肢体の障害が上肢下肢などの広範囲にわたる障害なので、障害認定基準の「肢体の機能の障害」の認定基準によります。

「肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。
 なお、多動可動域による評価が適切でないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺になっているもの)については、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体能力を総合的に認定する。」(認定基準より)

障害の程度 障害の状態
1級
  • ・一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの

  • ・四肢の機能に相当程度の障害を残すもの

2級
  • ・一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの

  • ・四肢に機能障害を残すもの

3級
  • ・一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの

(注)肢体の機能の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合は、それぞれの認定基準と認定要領によって認定されます。
また、肢体の機能の障害が上肢と下肢で相違する場合は、障害の重い肢で障害の程度を認定することになっています。

障害認定日の特例の適用

障害認定日は、原則として初診日から1年6カ月であり、その日以降でないと障害年金の請求はできません。
ただし、特例がいくつかあり、1年6月を待たなくても請求できるものがあります。
脳梗塞の肢体の障害もその一つで、「初診日から6ケ月経過後のに、診断書等に「症状固定」や「回復見込みなし」等の記載があれば、請求できますので、ご注意ください。

障害年金を請求する進め方

障害年金を請求する手続きの進め方は以下の通りです

  1. 初診日を調べて特定する
  2. 受診状況等証明書を取得
  3. 診断書(肢体の障害用)の作成を依頼
  4. 病歴・就労状況等申立書を作成

初診日を調べる

障害年金の請求には、「初診日」が非常に重要となります。なぜなら、初診日時点に加入していた年金制度(国民年金もしくは厚生年金)によって、受給できる障害年金が異なるからです。さらに、初診日前日までに保険料納付要件を満たしているかどうかを判断するためにも必要となります。

受診状況等証明書を取得

初診日を証明する書類として、受診状況等証明書があります。初診から請求する時まで、同一医療機関に通院している場合は、受診状況等証明書は必要ありません。しかし、初診の医療機関と、現在通院する医療機関が異なる場合、初診の医療機関で受診状況等証明書を取得する必要があります。

診断書の作成を依頼

障害年金の審査で一番重要なものは、診断書の内容です。
ご自分の状況をいかに主治医に詳しく伝えて、診断書に反映させてもらうかが重要です。

病歴・就労状況等申立書を作成

「病歴・就労状況等申立書」は、初めて医師の診察を受けた時の経緯、発病から現在までの経過を整理して、年月順で記入します。請求する人から病状の進み具合、障害により日常生活で困っていることなどを伝える唯一の書類です。

最後に

障害年金の請求は、認定されるのが難しいケースもあります。
認定基準や手続きの進め方で悩んだり判断が付かなかったりする場合は、一度年金事務所や社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

記事監修
この記事を書いた人

吉成玲子

職業:大和社会保険労務士事務所 代表社労士

所属:埼玉県社会保険労務士会、障害年金法研究会

27年の銀行勤務を経て、2009年に社会保険労務士として開業。 障害年金の相談員としての経験を経て、2012年より障害年金専門社労士として活動開始。相談件数1000件以上、裁定請求300件、審査請求20件、訴訟補佐人1件(勝訴)の実績を持ち、障害年金受給後のサポートも行い、多数の研修会やセミナーで登壇も行っています。