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高次脳機能障害で障害年金をもらうには?症状や認定基準を解説

2023.04.22

高次脳機能障害は障害年金の支給対象となる疾患ですが、外見からは分かりにくく、症状も複雑で本人の自覚がないため、障害年金を申請しても、認定されにくいのが現状です。この記事では、高次脳機能障害の症状、障害年金の認定基準などをご紹介します。高次脳機能障害の家族に代わって障害年金の申請(請求)を検討している方はぜひ参考にしてください。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、交通事故や脳梗塞などで脳がダメージを受けたときに現れる認知機能の障害です。主な症状として、怒りっぽくなる、注意が散漫になる、記憶が悪くなる、段取りができなくなる、集中できない、言葉が出にくい、などが挙げられます。

高次脳機能障害の原因の約8割が脳卒中(脳梗塞や脳出血、くも膜下出血)による脳血管障害で、1割程度が交通事故などの脳外傷によるものといわれています。その他にも低酸素脳症、アルコール依存症、脳炎などで発症することもあります。

乳幼児にも高次脳機能障害は起こり得る疾患で、激しい揺さぶりなど、虐待に関連して発症することもあります。

高次脳機能障害は事故などによる一時的なものでしたら、早期の治療やリハビリテーションによって改善することが可能です。しかし、障害年金のお客様でみると、脳卒中の後遺症など、長い時間をかけて発症する場合は、徐々に進行する方が多いです。高次脳機能障害は自覚症状がなく、本人だけでは気づけないことも多いですし、病院でも短時間診療のためか、指摘されないこともあるので、家族や周りの人が「おかしいな」と思ったら、高次脳機能障害支援センターなどに相談することをお勧めします。

高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害はダメージを受けた脳の部位などにより、現れる症状はさまざまです。ここでご紹介する以外にも数多くの症状があり、職場や近隣の人との間で、トラブルに発展することもあります。いつ、どのような行動が見られたかなどを、家族が毎日記録することで、障害年金の申請の際に役立つでしょう。

よく見られる症状の一部は、以下の通りです。

  • ・自分で置いた物の場所が分からなくなる
  • ・何度も同じことを説明しているのに、しばらく経つと再度聞いてくる
  • ・家族や友人の名前が思い出せない
  • ・物の名前がなかなか出てこない
  • ・通い慣れた道で自宅の場所が分からず、迷子になる
  • ・季節に合わせた服装を選ぶことができなくなる
  • ・簡単な計算はできるが、ケタ数が多くなると間違える
  • ・同時に2つ以上の作業を行うとミスが増えてできなくなる
  • ・会話の内容に一貫性がなく、話があちこちに飛んでしまう
  • ・急に泣き出したり、怒り出したりする
  • ・場違いな場面で、突然笑い出す
  • ・5分以上継続してひとつのことに集中できない

高次脳機能障害の障害年金の認定基準とは

高次脳機能障害における障害年金の認定基準は下記の通りです。

1級は常に援助がないと日常生活を過ごすことができない状態、2級は常に援助を受ける必要はないものの日常生活に差し障りがある状態、3級は労働に差し障りがある状態です。

障害の程度 障害の状態
1級
  • 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの

2級
  • 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級
  • ・認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの

  • ・認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの

高次脳機能障害の症状は、一見しただけでは分からないことも少なくありません。また、症状が重く日常生活や職場で支障があったとしても、障害年金の申請手続きに不手際があった場合は、認めてもらえないこともあるため注意が必要です。

手続きの中で注意が必要なのは、初診日の特定です。申請手続きに慣れていない方にとって、高次脳機能障害の初診日を特定するのは難しいため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

また、医師の診断書は、精神障害として記載してもらうのが一般的です。申請する際には、精神障害に詳しい専門の医師に診断書を書いてもらってください。主治医が高次脳機能障害の専門でない場合、認定に影響することも考えられるため、専門医を探して主治医を変更するのも一つの方法です。

障害年金を請求する進め方

障害年金を請求する手続きの進め方は以下の通りです

  1. 初診日を調べて特定する
  2. 受診状況等証明書を取得
  3. 診断書の作成を依頼
  4. 病歴・就労状況等申立書を作成

初診日を調べる

障害年金の請求には、「初診日」が非常に重要となります。なぜなら、初診日時点に加入していた年金制度(国民年金もしくは厚生年金)によって、受給できる障害年金が異なるからです。さらに、初診日前日までに保険料納付要件を満たしているかどうかを判断するためにも必要となります。

受診状況等証明書を取得

初診日を証明する書類として、受診状況等証明書があります。初診から請求する時まで、同一医療機関に通院している場合は、受診状況等証明書は必要ありません。しかし、初診の医療機関と、現在通院する医療機関が異なる場合、初診の医療機関で受診状況等証明書を取得する必要があります。

診断書の作成を依頼

障害年金の審査で一番重要なものは、診断書の内容です。
ご自分の状況をいかに主治医に詳しく伝えて、診断書に反映させてもらうかが重要です。

病歴・就労状況等申立書を作成

「病歴・就労状況等申立書」は、初めて医師の診察を受けた時の経緯、発病から現在までの経過を整理して、年月順で記入します。請求する人から病状の進み具合、障害により日常生活で困っていることなどを伝える唯一の書類です。

最後に

障害年金の請求は、認定されるのが難しいケースもあります。
認定基準や手続きの進め方で悩んだり判断が付かなかったりする場合は、一度年金事務所や社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

記事監修
この記事を書いた人

吉成玲子

職業:大和社会保険労務士事務所 代表社労士

所属:埼玉県社会保険労務士会、障害年金法研究会

27年の銀行勤務を経て、2009年に社会保険労務士として開業。 障害年金の相談員としての経験を経て、2012年より障害年金専門社労士として活動開始。相談件数1000件以上、裁定請求300件、審査請求20件、訴訟補佐人1件(勝訴)の実績を持ち、障害年金受給後のサポートも行い、多数の研修会やセミナーで登壇も行っています。