大和社会保険労務士事務所

お知らせ

脳出血の障害年金の認定基準とは?肢体麻痺・障害の程度や状態を解説

2023.06.19

脳出血を引き起こすと、肢体麻痺や言語障害・高次脳機能障害などの後遺症が残ることがあります。その場合、障害年金の受給対象となるため必ず請求しましょう。この記事では、認定基準として定められている障害の状態についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
*高次脳機能障害についてはこちらをご参照ください。

脳出血とは

脳出血とは「脳卒中」の中の一つで、血管が破れて脳の組織内に出血したことによって神経細胞に障害が起きる病気です。脳内に出血した血液は血腫となり、これが直接に脳細胞を破壊したり、圧迫したりして脳の働きを傷害します。 脳出血の主な原因として、高血圧や、それに伴う動脈硬化が考えられます。  *障害年金では「高血圧と脳出血は因果関係なし」とされています。 なお、脳出血は大きく5つに分類され、症状も微妙に異なります。

脳出血の症状

脳出血に前兆はほとんどありません。脳出血の部位や出血量で症状は異なりますが、初期症状として以下の症状が共通しています。

<脳出血の初期症状>
  • ・頭痛
  • ・めまい
  • ・吐き気・嘔吐
  • ・片麻痺(半身麻痺)やしびれを感じる
  • ・しゃべりにくさや歩きにくさを感じる

部位ごとの主な症状は以下の通りです。

<脳出血の部位ごとの症状>
部位 主な症状
被殻出血
  • ・頭痛、嘔吐

  • ・手足の感覚低下

  • ・片麻痺(半身麻痺)、顔面神経麻痺

視床出血
  • ・頭痛、嘔吐

  • ・手足の感覚低下

  • ・片麻痺(半身麻痺)、顔面神経麻痺

  • ・後遺症が残ってしまう場合が多い

  • ・合併症として「急性水頭症」が起こる場合がある

皮質下出血
  • ・頭痛・嘔吐

  • ・けいれん

  • ・軽い意識障害

  • ・五感の感覚障害、片目あるいは両目の視野が欠ける「半盲」

小脳出血
  • ・頭痛、嘔吐

  • ・めまい、ふらつき

脳幹(橋)出血
  • ・頭痛、嘔吐

  • ・片麻痺(半身麻痺)、両手足の麻痺

  • ・眼球運動障害(外転神経麻痺)

  • ・意識障害

  • ・呼吸障害


脳出血の障害年金の認定基準とは

脳出血による後遺症で肢体麻痺や何らかの障害がある場合、障害年金を請求できます。

肢体麻痺・片麻痺の障害認定基準

最も多い後遺症は肢体麻痺や片麻痺です。障害が広範囲にわたるため、上肢や下肢、または体幹・脊柱の機能の障害と分けるのではなく、「肢体の機能の障害」として認定します。 等級は1〜3級までありますが、3級に認定できるのは厚生年金加入者のみで、初診日に国民年金に加入していた方は1〜2級のみの認定となるため注意してください。 等級別の障害の状態は以下の通りです。

<肢体の機能の障害>
障害の程度 障害の状態
1級
  • 1.一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの

  • 2.四肢の機能に相当程度の障害を残すもの

2級
  • 1.一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの

  • 2.四肢に機能障害を残すもの

3級
  • 1.一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの

引用:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準

障害の状態は、以下のような日常生活に関わる動作から総合的に判断されます。

  • 手指の機能・・・つまむ、握る、絞る、結ぶな
  • 上肢の機能・・・食事、洗顔、排泄の動作、上位の着脱など
  • 下肢の機能・・・片足で立つ、歩行、立ち上がり、階段昇降など

これらを行う関節の可動域や筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮した上で認定基準が定められています。

言語機能の障害認定基準

脳出血により言語機能に後遺症が出る場合もあります。 等級に1級はなく、2〜3級まで設定されていますが、こちらも3級に認定できるのは厚生年金加入者のみです。初診日に国民年金に加入していた方は2級のみの認定となります。 等級別の障害の状態は以下の通りです。

<音声又は言語機能の障害の認定基準>
障害の程度 障害の状態
2級
  • 音声又は言語機能に著しい障害を有するもの

3級
  • 言語の機能に相当程度の障害を残すもの

障害手当金
引用:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準

言語機能の障害とは、具体的には以下の症状を指します。

  • ・構音障害・音声障害
  • ・失語症
  • ・聴覚障害による障害

会話において発声の機能に制限がないか、話す内容が聞き取れて理解ができるかどうか、その状態によって認定基準が定められています。 言語機能の障害のなかでも、特に構音障害は嚥下機能にも影響することが少なくありません。その場合は併合認定になるかどうかも考慮しておきましょう。


脳出血の障害年金認定日(症状固定)の目安

障害認定日は原則として初診から1年6カ月経過後です。しかし、脳出血による機能障害の場合、特例として初診から6カ月以降に「これ以上の回復が望めない」と診断された日を認定日とすることができます。

障害年金を請求する進め方

障害年金を請求する手続きの進め方は以下の通りです

  1. 初診日を調べて特定する
  2. 受診状況等証明書を取得
  3. 診断書(肢体の障害用)の作成を依頼
  4. 病歴・就労状況等申立書を作成

初診日を調べる

障害年金の請求には、「初診日」が非常に重要となります。なぜなら、初診日時点に加入していた年金制度(国民年金もしくは厚生年金)によって、受給できる障害年金が異なるからです。さらに、初診日前日までに保険料納付要件を満たしているかどうかを判断するためにも必要となります。

受診状況等証明書を取得

初診日を証明する書類として、受診状況等証明書があります。初診から請求する時まで、同一医療機関に通院している場合は、受診状況等証明書は必要ありません。しかし、初診の医療機関と、現在通院する医療機関が異なる場合、初診の医療機関で受診状況等証明書を取得する必要があります。

診断書の作成を依頼

障害年金の審査で一番重要なものは、診断書の内容です。
ご自分の状況をいかに主治医に詳しく伝えて、診断書に反映させてもらうかが重要です。

病歴・就労状況等申立書を作成

「病歴・就労状況等申立書」は、初めて医師の診察を受けた時の経緯、発病から現在までの経過を整理して、年月順で記入します。請求する人から病状の進み具合、障害により日常生活で困っていることなどを伝える唯一の書類です。

最後に

障害年金の請求は、認定されるのが難しいケースもあります。
認定基準や手続きの進め方で悩んだり判断が付かなかったりする場合は、一度年金事務所や社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

記事監修
この記事を書いた人

吉成玲子

職業:大和社会保険労務士事務所 代表社労士

所属:埼玉県社会保険労務士会、障害年金法研究会

27年の銀行勤務を経て、2009年に社会保険労務士として開業。 障害年金の相談員としての経験を経て、2012年より障害年金専門社労士として活動開始。相談件数1000件以上、裁定請求300件、審査請求20件、訴訟補佐人1件(勝訴)の実績を持ち、障害年金受給後のサポートも行い、多数の研修会やセミナーで登壇も行っています。