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慢性腎不全で人工透析が必要になったら障害年金の認定や請求はどうなる?
2023.08.25
慢性腎不全となって人工透析が必要になると、障害年金の該当者となります。認定基準と照らし合わせて等級が決定するため、等級ごとの障害の状態について知っておくことが大切です。この記事では、人工透析が必要な慢性腎不全の認定基準や障害年金を請求する際の進め方を解説します。慢性腎不全で障害年金の請求をしようと検討している方は、ぜひ参考にしてください。
人工透析が必要となる原因
人工透析は、腎臓の動きが悪化して末期状態となった場合に用いられる治療です。 人工透析が必要となる原因は、腎機能の低下です。腎臓は血液をろ過して老廃物や有害物質などを尿として排出することで、体内を浄化する役割を担っています。不要なものを出す一方、体に必要な成分は再吸収して体内の水分と電解質のバランスをコントロールするのも腎臓の仕事です。さらに、腎臓には赤血球を増やすホルモンや血圧を調整するホルモンなどを分泌したり、ビタミンDの活性化を促進してカルシウム吸収を助けたりする重要な働きもあります。 腎臓が上手く働かなくなると、食事をしたり水分を摂ったりすることで余分な水分や塩分、老廃物などが溜まってしまい、正しく排出されなくなります。人工透析は腎臓に代わり、水分や塩分、老廃物などを取り除いて血液を浄化してくれるのです。
人工透析の種類
人工透析は大きく分けて2種類あり、病気の状態や生活状況などによって選択されます。 日本にいる大多数の透析患者は、血液透析を選択しています。血液透析は、血液ポンプで血液を体の外に送り、浄化器によって老廃物や余分な水分をなくし綺麗になった血液を体内に戻す方法です。 もうひとつの方法は、腹膜透析と呼ばれています。腹膜透析は腹部に管(カテーテル)を挿入し、透析液を出し入れすることにより血液中の老廃物や余分な水分を除去する方法です。
慢性腎不全とは
慢性腎不全とは、腎臓の働きが不十分になった状態のことです。慢性腎疾患によって腎機能障害が起こり、持続的に徐々に進行することで体が正常に維持できなくなった状態が慢性腎不全と呼ばれます。 慢性腎不全が悪化すると、尿毒症と呼ばれる病気になります。尿毒症は腎臓の働きが低下することで全身に表れる変化であり、腎臓の働きが通常時の10分の1まで低下した場合に陥る症状です。腎臓が正しく働かない原因となっている病気の治療をしなければ、生命にかかわるほど深刻な事態となることもあります。 慢性腎不全によって腎機能が悪化すると、透析治療を行わなければ体内の浄化ができなくなります。
慢性腎不全の症状
腎疾患に分類される症状はすべて、長期間経過すれば慢性腎不全となる可能性があります。主な腎疾患は、以下の通りです。
<主な腎疾患>- ●糖尿病性腎症
- ●慢性腎炎(ネフローゼ症候群を含む)
- ●腎硬化症
- ●多発性嚢胞腎
- ●急速進行性腎炎
- ●腎盂腎炎
- ●膠原病
- ●アミロイドーシス
腎疾患の主要な症状として見られるのは、悪心や嘔吐、食欲不振、頭痛、浮腫、貧血、アシドーシスなどです。
慢性腎不全(人工透析)の障害年金の認定基準とは
慢性腎不全によって人工透析の治療を受けている場合、障害年金を請求できます。
腎疾患の障害認定基準
腎疾患のよる障害の程度は、状態によって1〜3級に分類されます。等級別の障害の状態は、以下の通りです。
<腎疾患による障害の認定基準>障害の程度 | 障害の状態 |
1級 |
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2級 |
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3級 |
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人工透析を受けている場合、原則として2級と認定されます。ただし、症状や検査成績、合併症の有無、日常生活の状況などによってはさらに上位の等級に認定されることもありますので、注意してください。
慢性腎不全の検査項目および異常値
腎疾患による障害の程度は、検査成績だけで判断されるわけではありません。検査成績のほかに、自覚症状や他覚所見、一般状態、治療や病状の経過、人工透析の実施状況、具体的な日常生活状況などを確認したうえで、総合的に認定されます。 総合的に判断されるものの、検査成績は判断材料のひとつとして重要な要素です。慢性腎不全の検査項目と異常値は、以下の通りとなっています。
<慢性腎不全の検査項目および異常値>検査項目 | 単位 | 軽度異常 | 中等度異常 | 高度異常 |
内因性クレアチニンクリアランス | ml/分 | 20以上30未満 | 10以上20未満 | 10未満 |
血清クレアチニン | mg/dl | 3以上5未満 | 5以上8未満 | 8以上 |
検査成績は変動しやすいため、腎疾患の経過中に行われて最も適切に症状を表していると思われる検査成績が認定に用いられます。
慢性腎不全の障害認定日
障害認定日は、原則として人工透析を初めて受けた日から起算して3カ月を経過した日となります。初診日から起算して1年6か月を超える場合は除かれるので、注意してください。多くの場合は人工透析を始めてから障害年金の請求をすることになるため、事後重症の請求が基本です。
障害年金を請求する進め方
障害年金を請求する手続きの進め方は以下の通りです
- 初診日を調べて特定する
- 受診状況等証明書を取得
- 診断書の作成を依頼
- 病歴・就労状況等申立書を作成
初診日を調べる
障害年金の請求には、「初診日」が非常に重要となります。なぜなら、初診日時点に加入していた年金制度(国民年金もしくは厚生年金)によって、受給できる障害年金が異なるからです。さらに、初診日前日までに保険料納付要件を満たしているかどうかを判断するためにも必要となります。
人工透析の方の場合の問題点は、初診から人工透析に至るまで何十年もかかっている方が多いので(特に糖尿病からの人工透析の場合)、初診日がわからないとか初診の病院が閉院していて、証明が取れない、など、初診日の確定ができないことが多いことです。 その場合は、最初から専門の社労士に依頼した方がよいです。
受診状況等証明書を取得
初診日を証明する書類として、受診状況等証明書があります。初診から請求する時まで、同一医療機関に通院している場合は、受診状況等証明書は必要ありません。しかし、初診の医療機関と、現在通院する医療機関が異なる場合、初診の医療機関で受診状況等証明書を取得する必要があります。
診断書の作成を依頼
障害年金の審査で一番重要なものは、診断書の内容です。
ご自分の状況をいかに主治医に詳しく伝えて、診断書に反映させてもらうかが重要です。
病歴・就労状況等申立書を作成
「病歴・就労状況等申立書」は、初めて医師の診察を受けた時の経緯、発病から現在までの経過を整理して、年月順で記入します。請求する人から病状の進み具合、障害により日常生活で困っていることなどを伝える唯一の書類です。
最後に
障害年金の請求は、認定されるのが難しいケースもあります。
認定基準や手続きの進め方で悩んだり判断が付かなかったりする場合は、一度年金事務所や社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。