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若年性アルツハイマーの認定基準とは?障害年金を請求する際の注意点

2023.11.10

若年性アルツハイマーは65歳未満の方に発症するアルツハイマー型認知症のことです。国が定める基準を満たせば障害年金が支給されるため、必ず請求してください。この記事では、若年性アルツハイマーの特性や認定基準として定められている障害の状態についてご紹介します。

若年性アルツハイマーとは

アルツハイマー型認知症の中でも65歳未満に発症するものが若年性アルツハイマーであり、働き盛りの30~50代で発症することが多く、進行速度が高齢者と比べて早いのが特徴です。日本医療研究開発機構(AMED)の調査によると、2018年時点で全国の若年性認知症の患者数は35,700人で、過半数を超える52.6%が若年性アルツハイマーでした。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000706870.pdf
アルツハイマー型認知症は、アミロイドβやと呼ばれるたんぱく質が脳に異常にたまり神経細胞を壊す病気です。遺伝的要因や生活環境などが関与すると考えられていますが、詳しい原因はまだ完全には解明されていません。 根本的に治療して完治する薬はまだ開発されていませんが、初期のアルツハイマー型認知症の進行を遅らせる世界初の点滴薬「レカネマブ」が2023年9月に正式承認されました。

若年性アルツハイマーの症状

患者本人に自覚がないことが多いため、家族や周りの方の早めのサポートが大切です。以下のような異変に気付いた場合は、積極的に医療機関での受診を勧めてください。

・忘れっぽくなった
・同じことを何度も聞く
・大切な物を置き忘れたり、しまった場所を忘れる
・言い間違いが多くなった
・仕事や家事の段取りが遅くなる
・怒りっぽくなる
・いつものスーパーに買い物に行って、帰り道がわからなくなった

さらに、2次的な症状として、妄想、抗うつの状態、徘徊、暴力、排尿・排便障害が起きることもあります。 受診する際は、本人だけが病院へ行くと症状を軽めに申告したり否定したりするケースがあるため、ご家族や周りの方が必ず同行し症状を正確に伝えるようにすることが大切です。

若年性アルツハイマーの問題点

仕事でのミスが増え、性格が怒りっぽくなったとしても、年齢的に認知症を考えずに疲れやストレスが原因だろうと放置してしまい、受診が遅れることも少なくありません。また、受診したとしても、うつ病や更年期障害といった別の病気と診断されてしまうこともあります。さらに、若年性アルツハイマーの進行速度は早く、週単位や月単位で進行することもあるため、周りがおかしいと気付いた頃には、末期症状にまで至っているケースも考えられます。

若年性アルツハイマーの認定基準とは

若年性アルツハイマーによって日常生活に支障をきたしたり、仕事ができなくなったりする状態であれば、障害年金を請求できます。ただし、年金の納付要件を満たさなければなりません。

初診日を証明する「受診状況等証明書」、発病から現在までの経過を記載する「病歴・就労状況等申立書」、専門医の診断書などの必要書類をそろえて請求すると、認定基準に応じて1〜3級の等級が決定され、等級ごとに定められた障害年金が支給されます。

障害年金を請求する際の若年性アルツハイマーの認定基準は以下の通りです。

障害の程度 障害の状態
1級
  • 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの

2級
  • 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級
  • 1.認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの

  • 2.認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの

引用:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準

初診日の時点で加入していた保険制度、支払った保険料の金額などによって、受給できる年金が異なります。等級は1〜3級までありますが、3級は厚生年金加入者のみ、初診日に国民年金に加入していた方は1〜2級のみの認定となるため、注意してください。 認定基準は「単身生活を想定した上で、日常生活動作においてどの程度の援助が必要か」によって判断されます。若年性アルツハイマーの場合、子供の養育費や住宅ローンなどの人生で一番お金がかかる時期での発症となるケースが多いため経済的負担が大きく、人生設計に大きな影響を及ぼしかねません。受けられる支援は最大限活用してください。

障害年金を請求する進め方

障害年金を請求する手続きの進め方は以下の通りです

  1. 初診日を調べて特定する
  2. 受診状況等証明書を取得
  3. 診断書の作成を依頼
  4. 病歴・就労状況等申立書を作成

初診日を調べる

障害年金の請求には、「初診日」が非常に重要となります。なぜなら、初診日時点に加入していた年金制度(国民年金もしくは厚生年金)によって、受給できる障害年金が異なるからです。さらに、初診日前日までに保険料納付要件を満たしているかどうかを判断するためにも必要となります。

受診状況等証明書を取得

初診日を証明する書類として、受診状況等証明書があります。初診から請求する時まで、同一医療機関に通院している場合は、受診状況等証明書は必要ありません。しかし、初診の医療機関と、現在通院する医療機関が異なる場合、初診の医療機関で受診状況等証明書を取得する必要があります。

診断書の作成を依頼

障害年金の審査で一番重要なものは、診断書の内容です。
ご自分の状況をいかに主治医に詳しく伝えて、診断書に反映させてもらうかが重要です。

病歴・就労状況等申立書を作成

「病歴・就労状況等申立書」は、初めて医師の診察を受けた時の経緯、発病から現在までの経過を整理して、年月順で記入します。請求する人から病状の進み具合、障害により日常生活で困っていることなどを伝える唯一の書類です。

最後に

障害年金の請求は、認定されるのが難しいケースもあります。
認定基準や手続きの進め方で悩んだり判断が付かなかったりする場合は、一度年金事務所や社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

記事監修
この記事を書いた人

吉成玲子

職業:大和社会保険労務士事務所 代表社労士

所属:埼玉県社会保険労務士会、障害年金法研究会

27年の銀行勤務を経て、2009年に社会保険労務士として開業。 障害年金の相談員としての経験を経て、2012年より障害年金専門社労士として活動開始。相談件数1000件以上、裁定請求300件、審査請求20件、訴訟補佐人1件(勝訴)の実績を持ち、障害年金受給後のサポートも行い、多数の研修会やセミナーで登壇も行っています。